Sifu(紙布) 第2のステージ ver.1

紙布を鞄へ~


5月の終わりごろ、久し振りに職場へ出勤しました。この頃には、化学療法も半分まで終わり、残すこと8クルーとなり長い治療もようやく先が見えてきました。

私が不在の間、経営パートナーで、私の夫でもある専務を中心に会社を守り、私の復帰を心待ちにしていてくれたスタッフ皆の顔を見ると、ホッとすると同時にこの一年で『何』かが変わりそして、これから尚も変わり続けていく空気を感じとりました。

この時には解りませんでしたが、その『何』についてなんだったのかが、後に答えが解るのですが、しかしそれはもう少し先の事です。

6月に入り、仕事の完全復帰に向け始動する私に更に前進させる出来事がありました。私が一年前紙布をテレビで見たその頃、専務に紙布で鞄を作りたいと話していましたが、その時は「1点物ならまだしも、生産となるとコストが合わない。話にならない。」と打ち切られてました。しかし、私は諦めきれず治療の合間に紙布を学ぶ為に動いてましたが、実は専務も、生産用の紙糸を探してくれていたのです。

そして、私がそれを復帰後最初の案件として手掛ける時には、新事業として立ち上げる間際までになっていました。ここに至るまでには、専務とスタッフだけではなく、10年近く弊社の担当をし私が不在時に専務を支えてくれた会計事務所の先生、取引先の信用金庫さんと様々な人達の支えがあっての立ち上げでした。

 

大病を患うと、大半の人達は何が間違っていたのだろうかと過去をふりかえりますが、私も大半の中の一人でした。

しかし、私には守るべき会社があり、そして、家庭には3人の娘たちがいることで、未来への事の方をより深く考えたのです。

私は何を残し、何を伝えられるのか・・と。20150704_101049

免疫力について、あらゆる本を読みあさっていた私は、身体は口にする食物によって創られていく事に注目しました。

そこで今後先、食べ続ける食事から体への影響を考え、極力自分の手で野菜を作り続けることにしました。そしてそれを食卓へ並べる。

また、自分の手で作った野菜はどれももったいなくて、以前は捨てていた葉の部分まで調理したり、ピーマンも必ず種まで食べるようになっていました。akiyasai2

このことを続けることで私は、農園へ足を運ぶことが多くなりました。そうしていると日常の中で自然界での変化や季節ごとの移り変わりに敏感になっていくのでした。

野菜作りには土づくりが大切です。土壌が悪いと根腐れしたり栄養価も低かったりと影響も大きいのです。このような事を毎日意識しながら生活していくと、仕事へもおのずとその考えがシフトしていくのでした。

昔の人達は生活や仕事も、自然の恩恵の中で育くみ、そして役目が終わったら自然に返還する。そうすと、また新たな恩恵を受ける。そのように自然と一体となって生きてきました。

その循環を壊してしまう、自然に還すことができない物は本来は創ってはいけないのではないかと、ふと考えるようになっていたのです。

事業者として、親として、残すべき物、伝えられる事。それらが紙子・紙布や織物の歴史を学ぶうちに、先人からのメッセージが届いてきているように思えてきたのでした。

こうして紙布の鞄~『Sifuバッグ』は和紙を原料としてだけでなく、自然環境への配慮をもりこんだ鞄としてここ足立区から発信していくことにしたのです。